近年、建設現場や公共インフラの整備・維持において「正確でスピーディーな測量」がこれまで以上に求められています。従来の測量方法では多くの人手と時間を必要としましたが、最新の UAVレーザー測量(ドローン測量) を活用すれば、短期間で高精度なデータを取得することが可能です。特に道路、山間部、河川、さらには災害現場など、人が立ち入りにくい場所でも安全かつ効率的に測量を実施できる点は、大きな強みといえます。
弊社は今年5月に設立された新しい測量会社として、最新のUAVレーザー機材と経験豊富な測量技師による運用を強みとしています。これにより、測量現場での工期短縮やコスト削減はもちろん、災害対応や公共事業における迅速な測量成果の提供まで幅広く対応しています。
これからの測量業界に欠かせない「UAVレーザー測量」。その特徴やメリットを、分かりやすく解説していきます。
UAVレーザー測量とは?
従来の測量と何が違うのか
従来の測量では、測量士が地上でトータルステーションやGPS機器を用い、点ごとに測定を進める方法が一般的でした。この場合、広範囲の測量を行うには多くの人員と時間が必要で、急峻な斜面や立ち入りが難しい現場では作業自体が困難になるケースも少なくありません。
一方、UAVレーザー測量は、ドローンに搭載されたレーザースキャナから地表へレーザーを照射し、反射した信号を解析することで、数千万点規模の「点群データ」を一度に取得できます。これにより、従来数日を要した作業が数時間で完了するなど、効率性は飛躍的に向上します。
また、写真測量では困難だった樹下の地形や構造物の影の部分も正確に計測可能で、精度面でも優れています。つまり、UAVレーザー測量は「時間短縮」と「高精度」の両立を実現する次世代の測量方法といえるのです。
建設現場で注目される理由
建設現場では工期短縮とコスト削減が大きな課題となっています。UAVレーザー測量は、上空から効率的に地形データを取得できるため、従来必要だった大規模な人員や長時間の測量作業を削減し、プロジェクト全体のスピードを高めることができます。
さらに、数千万点の点群データから高精度な3次元モデルを生成できるため、設計や施工計画に必要な情報を短期間で関係者に共有することが可能です。これにより、設計変更や施工精度の確認もスムーズになり、手戻りのリスクを減らせる点が大きなメリットです。
また、ICT施工やi-Constructionの推進においても、UAVレーザー測量は重要な役割を担っており、国土交通省の方針とも合致しています。建設現場の効率化と安全性を両立できる技術として、今後ますます導入が進むことが期待されています。
災害対応や公共事業での活用可能性
UAVレーザー測量の強みは、建設現場に限らず災害対応にも大きく発揮されます。地震や豪雨による土砂災害、河川の氾濫などが発生した場合、迅速に被災状況を把握することが復旧計画の第一歩です。しかし、人が直接現場に立ち入るのは危険を伴い、作業に時間がかかるのが従来の課題でした。UAVレーザー測量を用いれば、ドローンが上空から広範囲を短時間で測量し、高精細な3次元データとして状況を可視化できます。これにより、被害範囲や地形の変化を迅速に把握し、復旧計画や査定資料に活用できます。

また、道路や河川、山間部といった公共インフラの維持管理にも応用可能で、国や自治体の防災・減災対策を強力に支える存在となっています。災害大国である日本において、UAVレーザー測量は欠かせない技術のひとつといえるでしょう。
測量現場におけるUAVレーザー測量のメリット
大幅な工期短縮とコスト削減
UAVレーザー測量の最大のメリットは、従来の測量方法に比べて圧倒的に短い時間でデータを取得できる点です。従来は数日から数週間かかっていた広範囲の測量が、ドローンを使えば数時間から1日で完了します。
さらに、人員削減による人件費の節約や、再測量のリスクが減ることでコストの抑制にもつながります。特に大規模なインフラ工事や道路建設など、計画全体に影響を与える工程で効果を発揮し、プロジェクト全体の効率化に直結します。
危険区域や人が立ち入れない場所でも安全に測量
測量現場では、急斜面や河川敷、崩落の恐れがあるエリアなど、人が立ち入るには危険な場所が少なくありません。従来の方法では、作業員が危険を冒して現場に入る必要があり、安全面に大きな課題がありました。UAVレーザー測量なら、ドローンが上空からレーザーを照射してデータを収集するため、人が直接立ち入る必要がなく、安全性を大幅に向上させることができます。
特に災害発生直後の現場調査においては、二次災害のリスクを回避しながら作業が可能です。作業員の安全を守りつつ精度の高い測量を行えることは、信頼性の向上にも直結します。
高精度なデータによる設計・施工の効率化
UAVレーザー測量で取得される点群データは、数千万点以上の測定値を含む高密度な3次元情報です。このデータを用いることで、従来の平面的な図面では把握できなかった微細な地形変化や高低差まで正確に反映した3Dモデルを作成できます。設計段階ではシミュレーション精度が向上し、施工段階ではICT建機との連携によって効率的かつ正確な施工が可能となります。
また、工事中の出来形管理や進捗確認にも応用でき、関係者間の情報共有もスムーズになります。結果として、手戻りや設計変更によるロスを減らし、現場全体の生産性を高めることができます。建設DXやi-Construction推進の流れの中で、UAVレーザー測量は欠かせない技術となっているのです。
中小企業が抱える課題と解決策
測量人材不足と技術継承の難しさ
日本の建設業界では深刻な人材不足が進んでおり、特に測量や設計など専門性が高い分野では技術者の高齢化と人材確保の難しさが顕著です。経験豊富な測量士の数は減少傾向にあり、若手人材の育成や技術継承が課題となっています。
その結果、限られた人材に負担が集中し、工期の遅延や精度低下につながるリスクも高まります。UAVレーザー測量は、こうした課題に対する有効な解決策の一つです。ドローンを活用することで少人数でも広範囲の測量が可能となり、従来のように多くの人手を必要としません。
さらに、取得データは3次元モデルとして保存できるため、ノウハウやデータをデジタル資産として残しやすく、技術の継承や教育にも役立ちます。
高額なドローン設備投資が不要
UAVレーザー測量を自社で導入しようとすると、高額な機材購入費用や運用体制の整備が大きな壁となります。レーザースキャナ搭載型のドローン(UAV LiDAR)は数百万円から数千万円規模の投資が必要であり、さらに専門オペレーターの育成や保守管理のコストも発生します。大手建設会社であれば自社保有が可能な場合もありますが、中小企業にとっては現実的ではありません。その点、外部の測量サービスを活用すれば、初期投資を抑えつつ最新技術を導入できます。
必要なときに必要な分だけ依頼できるためコスト効率が高く、プロジェクトの規模や状況に応じて柔軟に対応可能です。高額な設備投資を避けながらも最先端の測量結果を得られる点は、大きなメリットといえるでしょう。
外注活用による効率的なプロジェクト推進
中小企業にとって、限られた人材と予算の中で多様な案件に対応するのは容易ではありません。特に災害時の緊急対応や公共インフラ整備においては、短期間での精度の高いデータ収集が求められるため、自社のみで対応しようとすると無理が生じることがあります。こうした場面で、外注によるUAVレーザー測量サービスを活用することは有効な選択肢です。専門の測量会社に依頼すれば、最新の機材と経験豊富な技術者が現場を担当し、スピーディーに結果を納品してくれます。
これにより、建設会社は自社のリソースを施工や管理業務に集中でき、自治体も迅速な意思決定につなげられます。結果として、プロジェクト全体の効率化と円滑な進行が実現し、最終的にはコスト削減と品質向上に貢献します。
災害現場で力を発揮するUAVレーザー測量
被災地の状況を迅速に把握できる
地震・豪雨・土砂災害などが発生した際、現場の状況を早期に把握することは復旧活動の第一歩です。しかし従来の測量や現地調査では、道路が寸断される、地盤が不安定になるといったリスクが高く、現場での安全確保が課題でした。UAVレーザー測量は、ドローンを飛行させることで広範囲を短時間にスキャンできるため、人が立ち入れない危険な場所でも安全に情報を取得可能です。
3D点群データとして出力されることで、被害規模や地形変化を正確に把握でき、復旧計画の立案をスピーディーに行えます。災害直後の限られた時間を有効活用し、早期復旧につなげられるのです。
二次災害のリスク低減
災害現場では、崩落や洪水など二次災害のリスクが常に存在します。従来の測量では、人が現地に足を踏み入れる必要があり、作業中の事故発生も懸念されてきました。UAVレーザー測量であれば、遠隔からのデータ収集が可能なため、作業員の安全を確保しつつ正確な情報を得ることができます。

例えば、土砂崩れの発生箇所や堤防の亀裂箇所を早期に検出できれば、追加の災害を未然に防ぐことが可能です。さらに、過去の地形データと比較することで変化量を数値化できるため、危険エリアの特定や避難計画の策定にも大きく役立ちます。結果として、災害対応における安全性と信頼性を高め、地域住民の安心につながるのです。
復旧計画への活用事例
UAVレーザー測量で取得したデータは、復旧作業の計画にも幅広く活用されています。例えば、河川氾濫後の堆積土砂量を正確に把握し、撤去工事の必要量を見積もることで、無駄のない施工計画が可能となります。また、道路や橋梁などインフラ被害の詳細を三次元データで可視化することで、復旧工事の優先順位付けや資材手配の効率化にも貢献します。
加えて、災害後の地形データは「災害記録」として蓄積され、将来の防災・減災対策にも活かされます。このように、単なる調査手段に留まらず、復旧・再建の全プロセスに直結する情報基盤として機能する点が、UAVレーザー測量の大きな強みです。
導入を成功させるためのポイント
運用目的を明確にすることが重要
UAVレーザー測量を導入する際に最も大切なのは、「何のために利用するのか」を明確にすることです。建設現場での出来高管理や土量計算を目的とするのか、災害対応の初動調査を想定するのか、あるいは公共事業の長期的な地形モニタリングに用いるのかによって、必要な機材やデータ精度は大きく変わります。目的があいまいなまま導入すると、機材選定のミスマッチや不要なコストが発生しかねません。
事前に「どの範囲を測量するのか」「どれくらいの精度が必要か」「どの部署がデータを活用するのか」といった条件を洗い出し、導入のゴールを共有することで、現場での活用効果を最大化することができます。
専門人材と教育体制の整備
UAVレーザー測量は高性能な技術である一方、ドローンの操縦、データ処理、3Dモデル解析といった専門スキルが求められます。そのため、導入企業には人材育成や教育体制の整備が欠かせません。操縦技術者には航空法や飛行許可の知識が必要であり、データ解析担当者には点群処理やGISソフトの操作スキルが必要です。外部の研修や専門会社との連携を取り入れることで、効率的に人材を育成できます。
また、最初からすべてを内製化する必要はなく、外部の測量会社に委託しながら徐々にノウハウを蓄積する方法も有効です。安定した教育体制を築くことで、長期的に持続可能な運用が実現します。
コストとROIを見極める
UAVレーザー測量の導入には、機材購入費・ソフトウェアライセンス費・人材教育費など、一定のコストがかかります。そのため、投資対効果(ROI)を意識した導入計画が必要です。従来の測量と比べてどの程度工期を短縮できるのか、災害対応でどれだけ迅速に被害を把握できるのか、公共事業でどれだけ効率的な維持管理ができるのか、といった定量的な効果をシミュレーションしておくと安心です。
また、近年ではレンタル機材や外注サービスの利用も広がっており、初期コストを抑えながら導入する選択肢も増えています。コストと効果のバランスを見極め、無理のないスモールスタートを切ることが成功のポイントです。
まとめ
UAVレーザー測量は、ドローンとレーザースキャナを組み合わせることで、従来の測量にに比べ、スピードと汎用性を実現できる革新的な技術です。建設現場では工期短縮やコスト削減、労働安全性の向上に直結し、災害対応では迅速な被害把握と復旧計画の立案に大きく貢献します。また、公共事業においても維持管理やインフラ点検の効率化に活用され、社会全体の安全性や利便性を高める存在となっています。
一方で、導入にあたっては明確な運用目的や教育体制、投資対効果の検討が欠かせません。こうした準備を怠らず、適切な運用設計を行うことで、UAVレーザー測量の真価を最大限に引き出すことができます。これからの建設業界や防災分野において、UAVレーザー測量は標準的な手法としてさらに普及していくでしょう。